「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」をみて、アイドルの魅力とは何なのかを考えた
この映画を見るきっかけとなったのは
乃木坂46の橋本奈々未さんが、グループの卒業、芸能界引退を発表したというニュースを読んだことである。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakajimayoshifumi/20161103-00064039/
この橋本奈々未さんは、グループの中でも人気が高く、CanCam専属モデルも務めるいわゆる売れっ子である。
そんな彼女が、芸能界を引退する意味が分からないと感じたのは私だけではないだろう。引退の理由としては、弟の学費にめどがついたことが大きいと語っている。
そもそも乃木坂46のオーディションを受けたのもお金が目当てだったと話している。学費や生活費を自分で工面する生活に限界を感じており、ロケ弁が食べられるからという理由でオーディションに応募したらしい。彼女の実家は電気やガスが止まるほど貧乏だったという。
卒業を美談に仕立て上げるという、秋元康氏による一種のプロモーションであるという見方もあるが、
SNSが発達した現代において事実を曲げたことがばれずに済むことはないだろうと考えられるので、彼女の実家が金銭的に苦しかったのは事実なのだろうと思う。
★★★★★★
私は、乃木坂46を含め、アイドルのCDを買ったことが無いし、ライブにも握手会にも行ったことがない。
しかし、2016年上半期CDセールスランキングで、嵐を抑え、AKB48に次いで、乃木坂46がTOP3にランクインしているところを見ると、彼女たちが多くの人の心をとらえていると考えられ、強い興味を抱いた。
「【2016年上半期ランキング】音楽シーンをけん引する三大勢力に新たな潮流」
http://www.oricon.co.jp/special/49069/2/
私には、アイドルの魅力がわからない。そんな私が、今回橋本奈々未さんの卒業・引退発表の記事を読んで、乃木坂46に興味を持ち、冒頭の記事中でも紹介されていた映画「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」を鑑賞し、乃木坂46の魅力とは何なのかを考えた。
★★★★★★
アイドルの魅力とは何なのか。
AKB48の公式ライバルとしてデビューした彼女たちはオーディションに合格するまでは、いわゆる素人であり、特別ダンスがうまい、歌がうまいわけでもない。幼少期からダンスレッスンを行っていたメンバーが多い、E-girlsのようなグループとは異なる。
劇中で最も強く感じたのは「自分を変えたい」という強い想いと彼女たちを襲う国民的アイドルの公式ライバルというプレッシャーである。
この映画は、メンバーの母親のナレーションと過去の映像を中心に展開され、メンバーたちの生い立ち、オーディションを受けたきっかけ、活動を続ける中での苦悩や葛藤が語られる。
いじめにあっていた過去。コミュニケーションをとるのが苦手で部活をやめた事。対人関係に悩み不登校となった事。そして、貧乏な家庭に育ち、そんな地元から抜け出すため東京に出てきたが、一日をおにぎりひとつで過ごすような苦しい生活をしてきた事。
そんな彼女たちが、厳しい芸能界で、プレッシャーと戦いながら奮闘していくのである。10代の少女が成果を求められ、成果がCDセールスや、選抜メンバーの人選等に明確に返ってくる。そんな中で彼女たちは何を思うのか。
★★★★★★
私は仕事とは成し遂げた成果、生み出した価値で評価される、そう考えていた。
一般的なビジネスの場では、5時間で出来ても、100時間かかっても、成果物の品質が同じであれば評価は同じであり、そうあるべきだと私は思う。
しかしエンターテイメントの世界では違うのではないか。
なぜなら、この世界では、どれだけ人の心を動かすかという点が重要であるからである。
もちろん一般的なビジネスシーンでも、理屈だけでは測れないものも多く、昔からの関係性や、人付き合い、人間としての魅力などが意思決定に大きな影響を与えているのは事実である。
しかし、エンターテイメントにおいては、こうした理屈では語れない要素が非常に大きい。
例えば、日本に住む人にとって、100円のおにぎりの価値は(大体)100円であり、こうした価値の感じ方に対する個人差は比較的少ない。
一方でエンターテイメントの世界はどうであろう。
乃木坂46のメンバーと握手ができる、ライブを見に行くなどの体験は、ファンではない人にとっては価値は0円かもしれない。
しかし、熱狂的なファンにとっては、何事にも代えがたいほどの経験となるのである。
こうした人たちがなぜ握手会やライブに価値を見出すのか。
ファンの心をとらえて離さないのは、様々な過去を抱え、プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、「自分を変えたい」という覚悟とともに夢を追い続ける彼女たちの姿なのだ。オーディションに合格するまでは普通の女の子だった彼女たちが、国民的アイドルの公式ライバルとして活動する重圧、大人(事務所)からのプレッシャー、世間からの評価にさらされながら、なぜここまで頑張れるのか、人の心を動かすのはwhatではなくwhyなのだ。
「whyからはじめよ」TED Talk
https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action?language=ja