約束の海

 

 

本日のオフはあいにくの天気であったため、ずっと読みたかった山崎豊子著『約束の海』を拝読した。
早朝Kindleで購入し、一気に読破した。

 

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主人公は海上自衛隊潜水艦部隊の若き士官。

海上自衛隊潜水艦と遊漁船の衝突事故を引き金とした、主人公の葛藤を描く。

国を守るために任務につく自衛官と、自衛隊バッシングにより国民感情を味方につけようとするマスメディア。また主人公が思いを寄せるフルート奏者のという第三者視点も取り入れる事で、戦争放棄した日本における、自衛隊の存在意義を問う作品となっている。

 

戦争には絶対反対という明確な立場の上で、平和を実現するにはどうすればいいのか?
自衛のための戦力を持ってはいけないという意見には反対する著者が描くのは、白か黒かで簡単に割り切れる物ではなく、その間で揺れ動く主人公の心の迷いがこの問題の複雑さを物語っている。

 

印象に残っているのは、過去の戦争について今まで何も話さなかった主人公の父親が、死亡者を出した衝突事故の責任を感じている息子に対して、真珠湾攻撃の際に、二人乗りの特殊潜航艇で部下を無くしたという自分の過去を語るシーンだ。

父親は問う。「死を賭してまでとは言わないが、身命は国民に捧げるくらいの覚悟が無ければ、それくらいの覚悟を持っていなくては国を守る仕事には不適だ。だからこそお前達の時代になっても、遺書を書いて任務にあたっているだろう」と、、、、、、


戦争をしないためにはどうすれば良いか。この問いには簡単には答えは出ないだろう。しかし、この親子の様に、命をかけて日本を守っている人たちがいる事。それだけは忘れずに生きて行きたい。そう思わせる作品であった。